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水族館で不意に握られた手の感触を思い出して、咄嗟にガバッと顔を上げる。
「あ、あれは、華先生が不意打ちするから……! あんなに人が居るとこで、いきなり手繋がれると思ってなかったし……」
「俺が言う『触れたい』っていうのは、あんなのよりもっと凄いこと、しようとしてるんだぞ」
凄いこと、と言われて、かつて母に見せられた作品の数々を思い浮かべる。華と付き合うことになってから、何度も思い出しては、あんな行為を自分もするのだろうかと想像して、航汰はその度青くなったり赤くなったりしていた。
まさか自分が同性に恋をするとは思っていなかったし、華が心配してくれるように、行為に対して全く恐怖や不安がないわけじゃない。
ただそれでも、華と過ごす時間が増えるにつれて、華から与えられるものは全て受け入れたいと思えるようになった。
華が航汰の存在を求めてくれるなら、航汰だってそれに応えたい。自分に与えられるものがあるなら、全て差し出したい。例えそこに痛みや恐怖が伴うとしても、華が航汰の隣で笑っていてくれるなら、何だって乗り越えられる気がした。
「……だったら尚更、それがどんなことなのか、華先生が俺に教えて」
反論される前に、航汰は目の前の口をキスで塞いだ。
「……本当に、お前は手強い」
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