番外編 手を出したいのは俺の方

12/17

1531人が本棚に入れています
本棚に追加
/170ページ
 水族館で不意に握られた手の感触を思い出して、咄嗟にガバッと顔を上げる。 「あ、あれは、華先生が不意打ちするから……! あんなに人が居るとこで、いきなり手繋がれると思ってなかったし……」 「俺が言う『触れたい』っていうのは、あんなのよりもっと凄いこと、しようとしてるんだぞ」  凄いこと、と言われて、かつて母に見せられた作品の数々を思い浮かべる。華と付き合うことになってから、何度も思い出しては、あんな行為を自分もするのだろうかと想像して、航汰はその度青くなったり赤くなったりしていた。  まさか自分が同性に恋をするとは思っていなかったし、華が心配してくれるように、行為に対して全く恐怖や不安がないわけじゃない。  ただそれでも、華と過ごす時間が増えるにつれて、華から与えられるものは全て受け入れたいと思えるようになった。  華が航汰の存在を求めてくれるなら、航汰だってそれに応えたい。自分に与えられるものがあるなら、全て差し出したい。例えそこに痛みや恐怖が伴うとしても、華が航汰の隣で笑っていてくれるなら、何だって乗り越えられる気がした。 「……だったら尚更、それがどんなことなのか、華先生が俺に教えて」  反論される前に、航汰は目の前の口をキスで塞いだ。 「……本当に、お前は手強い」     
/170ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1531人が本棚に入れています
本棚に追加