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第二話
「……人間に戻った王子は、ベルと一緒に、いつまでも幸せに暮らしました」
読み終えた絵本を、航汰はパタンと静かに閉じた。
父のベッドに寝転がって物語に聞き入っていた真波は、いつの間にか規則正しい寝息を立てている。
会議が長引いて遅くなる、と父から連絡があったので、この日は真波の保育園のお迎えから夕飯の支度、入浴に、そして寝かしつけまで、航汰が全て引き受けていた。
もっとも、寝る前の絵本の読み聞かせは、真波は父より航汰にせがむことが多い。多忙な父は、大抵いつも読みながら真波より先に寝落ちてしまうからだ。
ここ数日、毎晩真波が寝る前に「読んで」とせがむのは、『美女と野獣』ばかりだった。
───ハナせんせーは、この本のやじゅうみたい。
決まって、真波はそう言った。先生は最初から人間だろ、と航汰は笑ったけれど、中身は真面目で優しい華の見た目も、せめて子どもたちに恐がられない姿に魔法で変えてやれたらいいのに、と思う。
航汰が初めて華と顔を合わせたあの日。
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