相席どうぞ

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「いや、マジであの映画館ヤバイって!」 休み時間、悪友の奏汰(かなた)が興奮気味に言ってきた。 月に3度は先生から呼び出しを食らうほど先生受けの悪い素行の奏汰。 それはあくまで先生と生徒という間がらでの話で、友人として付き合う分には何ら問題はない。 ただ、ちょっとばかり暑苦しさを感じるくらいで。 「聞いてくれよ、祐也! 俺、あんなすげー映画館始めて見たわ!」 奏汰が話を盛るのはいつものことだ。 そうやって僕の興味を惹こうとしているのもわかっている。だから僕も関心のない素振りで話を聞くように心がけている。 しかし、今日ばかりはその熱量が違った。 おそらく放っておいても絡まれ続けるだろう。 そう感じた僕は仕方なく耳を傾けた。 「何が、どうすごいのさ?」 「よくぞ聞いてくれました。」 僕のその言葉を待っていたのか、まるで水を得た魚のように、目をキラキラと輝かせて奏汰が喋り始めた。
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