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聞けば、町外れの映画館が経営再建のため、
ある種のエンターテイメントを併せて提供し始めたらしいのだ。
縁もゆかりもない映画館の再建ばなしをしに
わざわざ隣の教室からやって来るのだから、ご苦労なこった。
ところが、僕がいくら聞けども奏汰はそのエンターテイメントの具体的な内容を教えようとしなない。
「だーかーら、どういう事なのか教えてくれよ。」
「それは行ってみてのお楽しみ。
つーわけで、今度の土曜に一緒に行こうぜ!」
奏汰は大事なところをしゃべらないことで、
僕をどうしても映画館に連れ出したいらしい。
そこで僕は一計を案じる。
「……奏汰のおごりなら考えてやる。」
「言ったね、裕二!
じゃあ、おごるから行こうぜ!入場料も100円だし!」
その言葉を聞いて、僕はしまったと後悔した。
学生といえど普通なら1000円はする。
その先入観を利用され、まんま奏汰の策にはめられたのだ。
にわかに不安になった僕は更に条件を付け加える。
「昼飯代もおごってくれよ?」
「おっけーおっけー!牛丼な!」
あまりの気前の良さにますます不安が募る。
こんなことなら、向こう1ヶ月分の昼飯代まで奢らせるべきだった。
しかし、それは後の祭り。僕は仕方なく週末を奏汰に献上することになった。
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