相席どうぞ

3/6
前へ
/6ページ
次へ
聞けば、町外れの映画館が経営再建のため、 ある種のエンターテイメントを併せて提供し始めたらしいのだ。 縁もゆかりもない映画館の再建ばなしをしに わざわざ隣の教室からやって来るのだから、ご苦労なこった。 ところが、僕がいくら聞けども奏汰はそのエンターテイメントの具体的な内容を教えようとしなない。 「だーかーら、どういう事なのか教えてくれよ。」 「それは行ってみてのお楽しみ。 つーわけで、今度の土曜に一緒に行こうぜ!」 奏汰は大事なところをしゃべらないことで、 僕をどうしても映画館に連れ出したいらしい。 そこで僕は一計を案じる。 「……奏汰のおごりなら考えてやる。」 「言ったね、裕二! じゃあ、おごるから行こうぜ!入場料も100円だし!」 その言葉を聞いて、僕はしまったと後悔した。 学生といえど普通なら1000円はする。 その先入観を利用され、まんま奏汰の策にはめられたのだ。 にわかに不安になった僕は更に条件を付け加える。 「昼飯代もおごってくれよ?」 「おっけーおっけー!牛丼な!」 あまりの気前の良さにますます不安が募る。 こんなことなら、向こう1ヶ月分の昼飯代まで奢らせるべきだった。 しかし、それは後の祭り。僕は仕方なく週末を奏汰に献上することになった。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加