星の子

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 私の記憶にある限り、優しい両親が生きていたのはほんの小さい頃、遠い昔のことだ。もう顔もよく覚えていない。  その両親が居なくなったのはある日突然のことだった。  小さな家は炎に包まれ、父はまだ幼子だった私を外に連れ出した後、足の悪かった母を助けに戻って、そのまま二人とも助からなかった。  私はいったん施設に預けられ、物心ついたころに、あの村の夫婦に引き取られた。  最初は優しそうな人たちだと思っていたのだ。  施設に来るたびに、新しいおもちゃや絵本、甘いお菓子をプレゼントしてくれたし、よく笑いかけてくれたから。  施設の職員たちは優しかったけれど、子供の数に対して全く人が足りていなかったから、私は愛情に飢えていたのだと思う。  やがて、私は夫婦に引き取られることになった。  少し遠い村だけど、ちゃんと良い子にして、幸せになるのよと、施設の職員は私を送り出してくれた。  けれども、私を待っていたのは酷い生活だった。  村に着くと、私は頑丈な鍵の付いた、冷たい地下室に閉じ込められた。  何が起きているのかわからなかった。  地下室にはボロボロの毛布が一枚投げ込まれていて、それ以外には何もなかった。     
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