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窓は天井に近い位置に明り取りのためのものが一つだけあり、そこから入る光だけが私に時間の感覚を忘れさせなかった。
食事は一日に二度、朝と夜に部屋に運ばれてきた。
一週間に一度、鎖に繋がれ外に出されて水浴びをし、その間に地下室が簡単に掃除されていた。
そんな暮らしを、気が遠くなるほど続けてきた。
何故私がこんな目に遭うのか、全くわからなかった。
きっと、神様は私を見放しているのだと思った。
ある日突然に両親を奪い、独りになった私に、もう一度幸せになれるかもしれないと思わせておいて、奈落の底に突き落とした。
私は神様を恨んだ。何もかもを奪い、私にこんな惨めな生活をさせている神様が憎かった。
けれども、途方もない時間の中で、やがて、神様は私を見放しているのではない、ということに私は気が付いた。
見放されているのではない。最初から存在しなかったのだ。神などというものは。
両親を奪ったのは、おそらく不幸な事故だった。施設に預けられたのは、かつて暮らした村の誰にも、私を引き取る余裕などなかったからだ。
施設の人があの夫婦に私を連れて行かせたのは、そうすることできっと、私が幸せになれると思ったからだ。
では、今は?
今この暮らしを私に強いているのは、この村の村人全員だ。
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