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先生が言葉を終えると、先生の胸から三年前のあの夜に見た、淡く青く光る光の玉がふわっと浮き出て、私の胸に吸い込まれるようにして入っていった。じわりと身体の中央から温かさが広がり、指先に届くと消えた。
「先生、良いんですか? 名前は対価じゃ……」
「対価はもう貰ったよ。私と過ごしてくれた、この三年がお前の対価だ。時間と言うのは何より貴重だからね。それを差し出すということは、それだけで大きな対価になるんだよ」
先生は優しい声でそう言ってくれた。
私は胸が温かくなり、先生を抱きしめ返した。
「対価だなんて。この三年間は……私の人生の記憶の中で最も素晴らしい時でした」
それから、ぎゅうっと腕に力を込めた。
「先生。……愛情にあふれた毎日を、ありがとうございました」
それからしばらく、私達は無言で抱き締め合った。
やがて、私は自分の中から温かいものが溢れてくるのを感じた。
身体を離してよく見ると、私の身体は内側から、じんわりと輝いていた。
時が来たのだ。
「先生……わたし、もう行きます。目的を遂げるために」
「ああ、そうだな。……行きなさい」
私は頷き、先生に背を向けた。
私は眩いほどの銀色の光に包まれ、地面を蹴って村に向かった。
光の束が身体から村全体を覆いつくすように広がり、一瞬にして全てを灰にする。
私は何もなくなった焼けた地面を見届けて、それから夜空に飛び立った。
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