0人が本棚に入れています
本棚に追加
すると、無感情だった魔女の視線に、何か憐みのようなものが混ざった。
「……神など、存在しないのにね」
そんなこと、とっくの昔に知っていた。
私には、何故憐れまれるのか、魔女に向けられる感情の理由はわからなかった。
「復讐だなんて、随分と過激なことを考えるね」
「貴女には出来ない?」
「……いいや、出来るよ。出来るが、お前は人ではなくなる。それに、直ぐにとはいかない。それなりに時間も掛かる」
「構わない」
既に私に残されたものなど、何一つなかった。復讐さえ遂げられるなら、人でなくなろうが気にはならない。
「……だろうね」
魔女は視線に憐れみを含ませたまま、ならばと此方に手を差し出した。
「名乗りなさい、人の子。願いと名前が揃って初めて、お前と私の間には契約が成立する」
魔女の言葉に、私は応えた。
「私は、ルーン」
「ルーン?」
「ええ。私はルーン。いつの日か復讐を遂げる、そのために力を望む者!」
「……良いだろう」
その瞬間、私の中で何かが砕ける、カシャンという音が響いた。
吹き荒れていた風が止み、辺りは静寂に包まれる。
気が付くと、私は魔女の真正面に立ち、右の手首を掴まれていた。
最初のコメントを投稿しよう!