星の子

　「先生、起きてください」
「……何だ、もう朝か？」
「いいえ、昼です。お茶を淹れて、簡単な食事を準備しましたから、起きて支度をしてください」
　先生はベッドから身体を起こすと、眠たそうな目で私を見て、それから軽く私の頭を撫でてくれた。銀色の髪が手の動きに合わせて揺れる。
　「おはよう、星の子。今日も良い子だね」
「ありがとうございます」
　私は撫でられるままそう答える。

　契約を交わしたあの夜から、もう三年が経つ。
　あの後、魔女は森の奥深くにあるこの二階建ての小さな家に私を連れてきて、新しい服と、温かい食事と、小さな部屋を与えてくれた。
　薄汚れてドロドロだった私に水浴びをさせ、ボサボサの黒髪を綺麗に整えて、真っ黒い膝丈のワンピースを着せてくれた。
　それから魔女は私をテーブルに着かせた。
　いつ準備していたのか、鍋はコトコトと煮立って柔らかい湯気を上げ、オーブンからは香ばしい匂いがしている。
　魔女は木のボウルに入った具沢山のスープを私の前に差し出し、焼き上がったパンを紙を敷いた籠に入れてテーブルの中央に置いた。
　スプーンでスープを掬うと、熱いから冷ましてから食べなさいと声をかけられた。