男子禁制バレンタイン

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 浜島千絵、愛称はまちー。小2のとき、ウチが彼女の家のとなりに家を建てて以来の、腐れ縁。溶かして固めるだけなのに、なぜにテーブルが粉まみれになるのか。謎すぎる。  ピンポン、とチャイムが鳴った。 「来た来た。みかげだー」  ブルーのギンガムチェックのスリッパをぺたぺた鳴らしながら、はまちーは玄関へ向かう。  わたしは持参したエプロンを装着し、腕まくりをした。蛇口をひねり熱いお湯を出し、焦げたチョコで汚れたキッチングッズを綺麗に洗っていく。 「うーっす」  スーパーの袋をぶら下げた森田みかげが、はまちーと一緒にキッチンへ来た。  みかげは、粉だらけのテーブルに袋をどさりと置いた。 「お菓子買ってきた」  一七三センチのみかげと、一四八センチのはまちーが並ぶと、まるで親子だ。  みかげとは二年生になってから仲良くなった。学校では、みかげとはまちーとわたしの三人で行動している。  はまちーがみかげの差し入れの入った袋をごそごそ探っている。 「友チョコ会だっつってんのに! なんで辛いのばっかり買ってくるかなあ!」 「わたし辛党だもん」 「今日はバレンタインだよ? そこは合わせようよー」 「やだ。甘いの苦手。来てやっただけましって思ってくれない?」  ふたりがやいやい騒いでるうちに、洗いものが終わった。ちょっとゴメンよと、みかげの巨体を押しのけてテーブルを拭く。     
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