一章3 『脳仕掛けの相棒』 ※挿絵有

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 もっと早く回収してれば、生きていた脳もあったろう。誰かの元に返してあげることも…いや、あの街では凄い人数が死んだらしい。一人生き残っても地獄だろう。これは結果的に良かったんだとウチは思う。  偶然て怖いな。様々な偶然が重なってギリギリ生命を繋いだわけだウチ等は。  アルビは感謝してるというが、本当にそうなのかウチは常に疑問だ。結局街人は助けられなかったし、アルビも今は記憶障害でこんな感じだ。  当のアルビは「寂しいけど、もう街人の事は日記の情報でしか知らないから大丈夫」と語った。今が大事なんだと。  そんなものなのだろうか。死者への想いは、記憶と共に消えてしまうのだろうか。  アルビはポジティブだなと、ウチは思う。でも実際アルビの記憶が無くなったのは幸いだろう。ウチなら耐えられない。そんな気がする。一緒に生きて来た家族、友人、もしかしたらいた恋人。みんな死んで自分だけ残されるなんて。  アルビと一緒に暮らしながらいつも思う。何故軍隊に入って兵士になったのだろうか。何故アルビの街を防衛に行ったのか。たった1人で。さっきも思ったが、軍に向いてなさそうなこのウチが。  仮に、記憶を失う前のウチに、大切な人がいたとする。その人が、グーバニアンのせいで死んだとする。そしたら、ウチは、軍人になって、復讐を…  思い出してはいけない記憶がある気がする。     
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