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プロローグ 『大切なあなた』
こぼれ落ちて行ってしまう。大切な人の記憶が。
もう、あなたの顔も、声も、ぬくもりも…何も思い出せない。
それがつらくて。とてもとてもつらくて。
だからウチは毎日、狂った様に確認する。あなたとの出会い、あなたとの旅路、あたながかけてくれた優しい言葉の数々。どれだけウチが、あなたを好きだったかを。
でもそれらも全て、どこかの小説みたいな…全部全部、作り話めいた他人事に思えて。だってウチには、あなたの記憶は何一つないんだから。確認してるこれは、ただの情報でしかないんだから。
あなたに会いたい。会って顔を見たい。声を聴きたい。もう一度、抱きしめたい。ぬくもりを感じたい。
でももうそれは叶わなくて。あなたにはもう、二度と、会えなくて。
胸に開いた穴が塞がらない。この穴が一つだったかも、複数だったかも、今となってはわからない。
いつかウチは、あなたの事を全て忘れてしまうんじゃないだろうか。あなたの名前も、この想いさえも…。
そしたら、そしたらあなたは悲しむかな。ウチが忘れたら、あなたの事を想ってあげられる人は、もう…。
だから立ち止まる事は出来なくて。あなたの意思を受け継ぎたくて。それしか、ウチを動かすものは無くて。
だからウチは…
「ウチが、この戦いを終わらせる。そして、ちゃんと死ぬ、から」
そう誓う事しか、出来なかった。
願わくば、死後の世界であなたに会えることを…。
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