猫になりたい

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富田さんのお母さんは、お邪魔したら悪いからって帰っていった。 みゆちゃんはお兄ちゃんと遊びたかったのに、と泣いてたけど…。 ……そして、まだ混乱中のあたし……。 富田さんがコーヒーを淹れて持って来てくれた。 「甘いのでよかった?」 ……なんでこんなに普通なのこの人? 分かってて黙ってたくせに! なんかイライラしてた自分が子どもっぽくてバカみたいで、 気付いたら涙が零れていた。 見られたくなくって背を向けて俯くと、 後ろからふわっと腕が回される。 「……ごめん、意地悪するつもりはなかったんだけど……結果的にそうなっちゃったか」 「……あたし、怒ってるんですけど……」 「えっ?」 「だって、前に妹に似てるって……あんなに小さい子だなんて!あたしのこと子どもとしか思ってなかったんですね……」 「……ミク」 名前を呼ばれて思わず顔を上げると、そっと唇を塞がれる。 …それは愛おしむように優しくて、 悔しいけれどただそれだけで、心の雲がすっと晴れるのを感じた。 「……ごめん、子どもだなんて思ってないよ。最初はホントにキレイで可愛い子だなって思った。  で、話してるうちに…自分を大人っぽく見せようと話すとことか、学祭の時ひなちゃんに対する独占欲とか見てたら、なんかみゆ思い出しちゃってさ」 …やっぱり子どもって思ってる!! 「すげー可愛くて、気付いたら気になって堪んなかった……あ、なんかこういう言い方したら俺シスコンみたいだけど、違うよ?ミクだから気になった」 「……富田さんって、みゆちゃん甘やかしてるでしょ」 「あ、バレた?」 それをシスコンって言うんじゃないの? …まぁ年の離れた妹なら、仕方ないのかな。 でも……それだけじゃあたしの気持ちは収まらない……。 「子どもじゃないって思い知って」 今まで培ってきた小悪魔テク、ここで使わないでどうする。 ……妹だって、猫だっていつまでも甘く見てたら、 噛みつかれるんだからね。
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