猫になりたい

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ひなちゃんはあたしのこんな性格を知らない。 というか、誰にも本音は話してない。 目立ち過ぎないように人に悪く思われないように、先のことを計算しながら上手く立ち回る。 そうやって今まで生きてきたのだから……。 「……猫カフェ?」 飲み会で仲良くなった富田さんと連絡先を交換して、付き合って欲しいところがあると頼まれた。 そして初めて二人で待ち合わせして来たのが、ココ。 「俺猫大好きなんだけどさ~。一人暮らしだとやっぱ寂しい思いさせるかもだし、世話も自信ないし。こういう店あるって知って、来てみたかったんだ」 「富田さんも初めて来るんですか?」 「うん。男同士とか一人じゃ来にくいだろ?」 「……彼女さんとか?」 「彼女いたらミクちゃん誘わないって」 顔をクシャッとさせて笑う……なかなか笑顔は可愛い。 「…富田さん、優しいし彼女いそうなのに」 「あはは。ミクちゃん、優しいね」 入ってみるとアジアンテイストな店内に、たくさんの猫が自由に動き回ってる。 あたし達も飲み物を頼んで、店内の一角に座った。 早速寄って来る一匹の仔猫。 猫って自由気ままなイメージだけど、やっぱりこういうとこだと人に慣れてるのかな。 「…可愛いね、お前」 指を差し出すとじゃれついてくる。 思わずもっと触りたくなって抱っこしようとしたら、すっと何処かへ行ってしまった。 ……やっぱり気まぐれ。 そこに手荷物を預けに行っていた富田さんが戻ってきた。 「可愛いね」 「はい…でも猫ちゃんって気まぐれですね」 「あ、違う違う。ミクちゃんのこと」 「えっ!?」 「抱っこ出来なくて口とんがらせてるのが可愛い」 笑いながら言われて、一気に顔が熱くなった。 ヤバい今……素だった!? 離れてたからまさか見られると思ってなくて……!! うぅ……自分のペースを取り戻さなきゃ。 「あたしの事はいいですから……」 「あはは。あ、また寄ってきた」 富田さんは寄ってきた子をひょいっと自然に抱っこして、じゃれついてる。 「…慣れてますね」 「うん、実家で飼ってるからね」 ……ホントに好きなんだろうなぁ。 見てるだけでも愛情を感じるような手つき。 愛しいものを見るような目も…… この人を落としてみたい。 なんとなくそう思ってしまった。
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