猫になりたい

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ちょうど店番の交替時間になったので、ひなちゃんと青木さんを送り出して……必然的に富田さんと二人。 「……富田さん、あたしと一緒でいいですか?」 「えっ!?むしろ俺なんかと一緒でいいの?友達と約束とかあったらそっち優先していいよ!」 「いいえ!ずっと会えてなかったし……一緒に周りたいです」 「……じゃあ」 「はい!案内します!」 さり気なく富田さんの肘に手を添えて歩き出す。 あまり積極的過ぎないように、軽いボディタッチ。 食べ歩きながら大学内を案内する。 知ってる人には「彼氏?」とか聞かれたりして、ちょっと嬉しくなったり。 「ミクちゃんってホントに可愛いね」 突然言われて、ちょっとドキッとしてしまう。 「え?急にどうしたんですか?」 「なんかさ、俺の妹にところどころ似てるんだよね」 い……妹!? あたし……よくしっかりしてるとかお姉さんっぽいって言われるんだけど……。 富田さんが年上だからって、妹みたいに見られてるなんて……。 ショックを受けてるあたしに微笑みかけながら、また猫耳を触る。 「あと猫にも似てるかも。可愛くて、寄って来るんだけどつれない感じ?」 ……つれない? あたし、そんな風に見えるの? 常に計算して、自分を作ってるせい? ふと、あの猫カフェで猫を撫でる富田さんの手を思い出した。 ……あの時確かに、 あの猫になりたい って、思った自分がいた。 ……でも今は、嬉しいのか嬉しくないのかよく分からない。 「……じゃあ、あたしも猫みたいに可愛がって?」 上目遣いでじっと目を見て言ってみる。 すると富田さんは、ひょいっとあたしを抱き上げて片腕に乗せた。 あたしがビックリして頭にしがみつくような格好になって、 至近距離で優しい顔で笑った富田さんは、空いた方の手であたしの髪の毛をくしゃっと撫でた。
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