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頭の中ぐちゃぐちゃで走った。
いつでも相手の反応を予想して、期待通りの言葉を並べてたのに
今は自分の気持ちすらコントロール出来ない。
こんなみっともない気持ち、知らない。
気付いたら見た事もない公園で、力が抜けたように植え込みに腰かけた。
目を瞑るとさっきの光景が頭に浮かぶ。
「…………見つけた」
頭上から聞こえた声に顔を上げると……さっきまで会いたかった人の顔。
「……なんで……」
「足早いね、ミクちゃん」
今は一番見たくないのに……。
顔を見られたくなくて俯いた。
「ビックリした。ひなちゃんの声が聞こえたから……なんで逃げたの?」
……なんで、一番嫌なこと聞くの?
しかも心なしか嬉しそう?
富田さんってデリカシーないかも……。
イライラして、上手くあしらえない自分にも嫌気がさして、
このまま逃げてしまいたいとさえ思う。
そしたら急に富田さんの手が伸びてきて、また子どもみたいに抱き上げられた。
「きゃあっ!?な、何するの…!?」
「んー?だってミクちゃん逃げそうだから。猫みたいだしね」
……見透かされてる。
体を持ち上げられたまま至近距離で顔を覗き込まれて、恥ずかしくて顔を背ける。
「……降ろして」
「嫌だ。可愛がってもいい?」
学祭の時のことを思い出して、顔が熱くなる。
また撫でられるの?
……でも、なんで?
さっき女の人といたじゃない……。
こんなの、あり得ない。
……なのに、撫でられたいと思ってる自分が一番あり得ない。
欲求に抗えずに頷くと、富田さんは満足そうに笑って
ぎゅっと体をひっつけると、
髪の毛を撫でながらあたしの頬にキスをした……。
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