猫になりたい

9/17
前へ
/17ページ
次へ
逃げないように、と手を繋がれたまま富田さんのマンションに帰る。 なんだかふわふわした気分……だけど、心の奥には黒い暗雲がまだ立ち込めたまま。 ……あの人のこと、まだ何も聞いてない。 なのになんで、キスなんかしたの? 全然分からない……。 あたしの気持ちを見透かしたように微笑みかけてくる。 「帰ったら分かるよ」 「え……?」 富田さんが鍵を開けて部屋の扉を開けると…… 「あ、おかえりなさい。あつしくん」 ……ズキ。 綺麗な微笑みを浮かべて、さっきの人が出てくる。 そして傷付いてる暇もなく……部屋の奥からドドド…と足音が聞こえた。 「え…!?」 「おかえりー!!遅いよー!みゆ待ってたのにー!!」 「あはは、みゆゴメンなー」 何食わぬ顔で……走って来た女の子を抱き上げる富田さん。 どう見ても5才ぐらい?の女の子……。 え……じゃあ……まさか彼女じゃなくて、奥さんとか……? しかも子持ち!? ショックで何も言えずにいると……隣から噴き出すような笑い声が聞こえた。 「ミクちゃん、めちゃくちゃ顔に出てるけど……そんな訳ないだろ?」 「え…………?」 「この人は、俺の母さん。で、俺の妹のみゆ」 …………は? いやいや、どう見ても母親には……。 「…………嘘だ」 「嘘じゃないって。俺が高校の時に親父が再婚したんだ。一回りも下のこの人と」 「驚かせてごめんなさいね。あつしくんの母です」 ……じゃあ……本当に……?
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加