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逃げないように、と手を繋がれたまま富田さんのマンションに帰る。
なんだかふわふわした気分……だけど、心の奥には黒い暗雲がまだ立ち込めたまま。
……あの人のこと、まだ何も聞いてない。
なのになんで、キスなんかしたの?
全然分からない……。
あたしの気持ちを見透かしたように微笑みかけてくる。
「帰ったら分かるよ」
「え……?」
富田さんが鍵を開けて部屋の扉を開けると……
「あ、おかえりなさい。あつしくん」
……ズキ。
綺麗な微笑みを浮かべて、さっきの人が出てくる。
そして傷付いてる暇もなく……部屋の奥からドドド…と足音が聞こえた。
「え…!?」
「おかえりー!!遅いよー!みゆ待ってたのにー!!」
「あはは、みゆゴメンなー」
何食わぬ顔で……走って来た女の子を抱き上げる富田さん。
どう見ても5才ぐらい?の女の子……。
え……じゃあ……まさか彼女じゃなくて、奥さんとか……?
しかも子持ち!?
ショックで何も言えずにいると……隣から噴き出すような笑い声が聞こえた。
「ミクちゃん、めちゃくちゃ顔に出てるけど……そんな訳ないだろ?」
「え…………?」
「この人は、俺の母さん。で、俺の妹のみゆ」
…………は?
いやいや、どう見ても母親には……。
「…………嘘だ」
「嘘じゃないって。俺が高校の時に親父が再婚したんだ。一回りも下のこの人と」
「驚かせてごめんなさいね。あつしくんの母です」
……じゃあ……本当に……?
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