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 目が覚めた。何と悲痛な夢だろうか。思い出すのもはばかられるほどの夢だった。まるで世界が崩壊したような夢。こんなにも発展した世界で、あんな非現実的な事が起きるはずがない。馬鹿げた夢を見たものだ。  さぁ、今日はこの世界を祝う盛大なパーティーだ。忙しくも楽しい一日の始まりだ。わたしは思いを馳せながら、家の扉を開け放った。  目が覚めた。わたしは息を吐くと苦虫を噛み潰したような笑みを浮かべた。このような絶望的な世界に置かれても、なお希望を絵に描いたような夢を見る。手に入るはずもない妄想を浮かべた所で虚しいだけなのに。あたりには朽ちた死体が無数に転がっている。珍しくも何ともない。  もはや生き残っているのはわたしだけかもしれない。それはひどく憂鬱な事だ。あぁ、だれか早くわたしを殺してくれまいか。  けれども、そうしてくれる『人』がもういない。この世界には、わたしを殺す人間すらも。ならば、もうこうするしか方法はない。  わたしは、集めた枯れ木を盛大なまでに燃やした。さようなら。この世界。煌々と輝く炎の中へとわたしは飛び込んだ。皮膚が焦げる臭いがした。髪の焼ける臭いがした。肉が香ばしく焼けていく。喉の奥に焼けた火箸を突っ込まれたように熱い。眼球が耳が手が溶けていく。悔いはない。  ようやく自由になれた。わたしは、『生』を手放した。  目が覚めた。いつになったらわたしは本当に目覚めるのか。どうかこの悪夢から解き放ってくれ。もう懲り懲りだ。こんな無慈悲な夢を見せられたら、せっかくの幸福な日常が最悪なものとなってしまう。  この頃のわたしはどうも変だ。おかしな夢ばかり見る。破滅した世界で、死を求める夢。それが、やけにリアルで終いにはどちらが現実のものなのかすらも、曖昧になる。頭痛がする。今日は家で休んでいたほうが良さそうだ。窓を少しだけ開けてベッドへ横になればきっと良くなる。夢の事もすぐに忘れるだろう。次に見る夢がこの世界と等しく、どうか平和でありますように。  それにしても、微かに感じるこのすえた臭いは気のせいだろうか。
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