蓮華

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私の乗った車は、エンジンの音を響かせながら、夜の街を走っている。   どうして自分が車に乗っているのか解らないが、私は別に悪い気は為なかった。   何故なら、隣で運転する男が、とても綺麗な顔の持ち主だからだ。   きっと、店に飲みに来た客の誰かなのだろう。   記憶が曖昧なのは、今日もまた飲み過ぎたからに違いない。   そう思いながら、対抗車のライトを浴びる彼の顔を見ながら言葉をかけた。   「ねぇ、タバコ持ってる?」   流れる音楽に耳を傾けていた彼は、驚いた様子を見せると   「タバコ止めたんじゃなかった?」   そう言うのだ。   「私、止めてないよぉ。そんな事言ったっけぇ?飲み過ぎちゃったのかな。そんなの覚えてないしぃ。」   だから持ってるなら頂戴と、再び催促を試みる。   しかし、赤信号で車を停止為せた彼は、顔を顰めてこう言うのだ。   「飲みすぎたって…何を?」   一体、何を言うのかこの男は…と、私まで顔を顰めてしまって、でも其れは冗談なんだろうなと思うと笑って私は言った。
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