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[誠一君]に幾つか質問を終えると、トントンと手に持つペンで机を叩きながら、パソコンの画面に撮されているX線・CT・MRI・脳波のデータを見ながら医師は唸った。
最初の診察時に、状況を詳しく話す為に待合室に待って貰っていた旦那であると言う[誠一君]は、私の隣に座って医師の口が再び開くのを待っている。
「奥さんの健忘が進んでいますね…誠に…申しにくいんですが、奥さんは結婚為れる以前からの記憶も欠落してる様ですね。」
医師はそう説明を始めた。
旦那の[誠一]君は、今どの様な顔を為ているのだろうか。
気にはなるが、気にする事はないんだと言う思念が、心中に漂っていて、私はその思念に違和感なく従う。
「前回お話しをさせて頂いた様にですね、頭を強く打った際の逆向性健忘の可能性と、解離性健忘の可能性の2つのお話しを致しましたが…。健忘が進んでいる事から、解離性健忘の可能性の方が強くなってきましてね。おそらくは、間違いないでしょう。」
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