鈴原誠一 #2

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「もしもし」   「もうすぐ家の近くに着くから…」   電話の向こうから雑音と共に聴こえる低音の声の主は、電話に出るなり唐突に用件だけ言うと黙って此方の返事を窺っている。   「え?あ、はい分かりました」   「………」   「…………」   「………」   「なんか…す」   ブツ   長い沈黙に負い目を感じ為せられて謝ろうとしたのに、その[誠一くん]は躊躇する事なくブツリと通話を切った。   何なの、この人…   私は嫌悪感を抱き携帯を見ながら溜め息を溢すと、次に「もうすぐ着くから」と言う言葉を思い出して我に返り急いで出掛ける準備に取り掛かった。   簡単に着替えと化粧を済ませると、再び[誠一くん]からの着信音がなる。   今度は何かと出てみると、「着いた」とだけを伝えて来たのだ。
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