鈴原誠一 #2

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普通身内や知り合いが迎えに来れば、取り敢えずは家まで入り一言挨拶をするのだが、何故この[誠一くん]は、たった此所まで呼びに来る事さえも惜しむのだろうか…。   まして、母の知り合いなら母にも一言位声を掛けて行こうとは思わないのだろうか…   と、不服に思ったが、忙しいのに態々(わざわざ)病院に連れて行ってくれるのだからと気持ちを改め、一応二階に上がった。   母は丁度深く眠っていて、ドアを開けた事にさえ気付かない様子だったので、仕方なく起こさない様にそっとドアを閉め、祖父にだけ病院に行ってくると伝えてから家をでる。   家を後にした私に、再び快く思えないその[誠一くん]に対しての不満が募り始める。   例え、どんなに親切で素晴らしい事を為たとしても、相手側に感謝の意より先に負い目を感じさせてしまう様であれば、それは美徳としない私にとって、これから病院に連れて行って貰う間の時間を思うと、気が重たくてしょうがないのだ。   足取りは重いが、やはり待たせてはいけないと急かされた様な気持ちの方が強く、車を停めてあると言う近くの空き地に小走りで向かって行った。
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