鈴原誠一 #2

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空き地に視界が開けて来ると、黒光りするシボレーの四輪駆動車が目に飛び込んできた。   その車の前で、茶髪のサングラス姿で、整えられた顎髭のある30代から40代の男が空を見上げて煙草を吸っている。   此方に気付いたその男は、煙草を携帯灰皿に押し入れて車に乗り込んだ。   この場所には他に誰も居ない事から、この男があの[誠一くん]なのだろうとは思ったのだが(正直言うと"君"を付ける年齢ではない気がするが、母からすれば問題は無くなる)、恐る恐る男が乗り込んだドアより反対側のドアを開けて、取り敢えずもう一度謝辞の言葉を掛けてみる。   「すみません…」   こう何度も謝っていると本当に申し訳ない気持ちで一杯になり、何か悪い事を為てしまったんじゃないかと不安になってくる。   男は「あ?あぁ…」と少し間の抜けた様な声で言うとエンジンを駆けたので、取り敢えず車に乗りシートベルトを閉めた。
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