鈴原誠一 #2

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ついさっきの電話の声色とは程遠いとは思ったが、そんな事なんか気にする余裕もない。   この車は2ドアタイプだった為、運転するその[誠一くん]の隣に座ると、体格も良く背が高い事が犇犇(ひしひし)と肌に感じる威圧感で分かる。   大柄で日に焼けた肌の上に、グリーン色の生地にプリント為れたシャツ、その上から黒の龍の柄が入った派手なシルクのアロハシャツを羽尾って、デニムのダボっとした短パンに雪駄(せった)と言う、如何(いか)にも柄の良いとは言えぬ格好の[誠一くん]に、背が低く小柄な私はますます畏縮(いしゅく)していく。   母とはどうゆう知り合いなのだろうか…   男の格好が格好なだけに、その年齢は大きく幅を開けて想定される。   早く言えば年齢不詳…   はぁ…   と、思わず洩れそうになった溜め息を、男が気を悪くしない様、慌てて呑み込んだ。   そんな車内に漂う重たくて気まずい空気を吸い続けたせいだろうか、鬱積していた感情は徐々に吐き気をもたらししてくれたのだ。
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