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きっと耳まで赤く染まっているだろう私の顔は、俯く事に因って、ワンレンの長い髪で誤魔化せている筈。
高鳴って未だ落ち着かない胸を深い呼吸でなだめようとした時だった。
後ろ髪を引かれる思い…では無く、後ろ髪を何かに触れた感覚で振り向くと、自分の長い髪が彼の手から今、さらりと溢れ落ちる所だった。
彼は掬(すく)う様に私の髪に触れていたのだ。
そう理解出来ると、今度は時間も心臓も止まっているんじゃないかと思う位、もう一度視線を此方に向けている彼の顔しか目に入らなくなっていた。
静かになった心臓とは逆に、意識為すぎて呼吸の仕方を忘れてしまったのか息が為づらくさえ感じる。
「キャップとか被らなくていいの?また誰かと目が合うと目を反らせなくなってまた事故りそうになるんじゃない?」
目を細めて微笑んだ彼はそう言って歩き始め、私の横にふわりと甘く爽やかな香りの漂う軌跡を残していく。
どうしてその事を…と目で彼の後ろ姿を追った。
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