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相変わらず冷たい表情で横目に私を見ながら「冗談だけど」と低いトーンの声を私に向ける。なんだか見透かせれている気がして、心なしか軽蔑の眼差しに思えて仕方ない。
顔が赤くなってると言う指摘に、「まさか!なんで赤くならなきゃいけないの?」と心中ギクリとして汗がぶわっと吹き出してきた。
更にそのあとの冷たい目をした彼とひんやりとした低い声が、汗の気化熱と相乗効果で一瞬にして体温を下げていく。
やはり圭吾の機嫌はあまり良くない様だ。
それも当然といえば当然だ。
しばらく歩いていると、病院裏側の夜間救急の裏口だろうか。
その入り口が広目の外来用パーキングエリアを隔てて見えて来た。
何時間か振りに見知った場所に出て少し安堵する。
「あの、えっとその…」
今までの長い沈黙が、スムーズに言葉を繋げていく事を難しくしていた。
「えっと…もしかして私の入院する前の事を、知ってるんじゃないかなと思って…」
その圭吾くんが…と言葉に続けたが、振り向いた人形の様な無機質な表情に萎縮して最後の方の言葉は濁りきってしまった。
それでも尚も彼は、その表情を私に向けたまま黙っている。
「…勘違いかもしれないけど、ほら、圭吾くん、バイクで事故ったって…。私が入院した理由もなんだか知ってる様だったし。何か知ってるんでしょ?」
私は黙ったままの圭吾に、この状況からの突破口が見つかる事を願いながら一先ずの質問を投げ掛けた。
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