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「もしもし…、仕事は…終わった?」
「うん、今終わった所…」
昼間に聞いたばかりのその声は、道に迷って張りつめた私の胸をほっと安心させた。
「…仕事で疲れてるのに、何だかごめんね。圭吾君に、その聞きたい事があって…、まだ近くに居るんだと思うんだけど…」
「……………え?」
「なんか道に迷ってしまって、今居る所が何処かも分からないんだよね。」
軽く驚いた彼にあまり余計な心配も迷惑もかけたくなくて笑いながら話した私。
既に道に迷ってる時点でそれはあまり意味のなさない物だと解ってはいるものの、取り敢えずこんな自分が滑稽だと笑うしか出来なかった。
「…今何処?近くに何があるか分かる?」
携帯から聞こえる声では、圭吾の機嫌が今どの位悪いかも分からなかったが、だけど圭吾は私の今居るこの場所を割り出して探し出してくれるみたいだ。
記憶を無くしてるだけで面倒だって言うのに、道に迷って更に面倒かけさせて…
少なくても機嫌が良くなってるとは考えにくい。
「え、あ、えっと…………家…とマンションと……マン…ション……………」
「………他には?」
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