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私は声を上げて立ち止まった。
左に曲がったその道の先の方には、広めの車道に繋がっている様で、その道の歩道を通過していく圭吾らしき人物が私の視界に小さく横切る形で飛び込んできたからだ。
圭吾の救いの手を諦めていた私の心臓は、ドキドキと跳ね上がった。
向かい側からの通行人が声を上げた私を不思議そうに見ながら通り過ぎて行く。
追いかけて声をかけるには距離が離れ過ぎている。
私の見間違い?
それとも…
ハッとなってバッグの中から携帯を取り出し、時間を確認すると、あれから30分近く経っている事が分かった。
直ぐ様圭吾の着信履歴を表示させ通話ボタンを押そうとした。
「………」
だけども、私は携帯を握ったまま動きを止めてしまって、通話ボタンを押す事を躊躇した。
ただの見間違いだったら、どうしよう…
もし彼は既に帰宅していて、私の勘違いで彼にかけてしまったら、余計に機嫌を悪くさせ、更には帰った彼を責めている様になってしまうのじゃないのか…と、また頭の中でグルグルと思考を巡らせだしたのだ。
でも、もし本当に探し回ってくれていたら…
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