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認識 #2
中3…
私が「そうですか…」と返すと、男はこちらの様子を伺いながら電話をかけ始めた。
まさか、そんなに早い頃だったとは思わなかった。
圭吾に中学生の頃の自分自身を重ね、過去の自分を思い出していた。
まだまだ親を必要とする年頃だ。
圭吾の追った傷の深さがどんだけ深いかを考えていると、私は急に居た堪らなくなってきた。
今一つ、彼が私に対してどう思っているのかを、彼に確かめたくなってきたのだ。
だが、それを確かめて何になるんだと思う所もあった。
私は一旦考えるのを止めて、皿を洗う水の冷たさに意識する。
私は…既婚者で子供がいる。
きっとこの事実が私を縛り付けているのだろう。
だけど私は…、今の私はきっとその事実がなかったら、私は彼の事を……?
「あ、ごめん!!もう片付いたね。ありがとう。」
「いえ、此方こそご馳走様でした。私はこれで失礼します…」
「いえいえ。あ、今度は圭吾とおいでね。運転は拓磨に任せれば飲めるし。圭吾から金取れるし。」
と男は満面の笑みを浮かべた。
私は再び頭を下げて礼を言うと、潜ったシャッターを静かに下ろした。
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