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月夜の下に #2
私は、更に鮮明に、二日前のあの時の事を思い起こし始めた。
あれから、私と圭吾は、思い出すと恥ずかしくなるくらい暫く抱き合ったままで、その場所に居竦まっていた。
そして、どちらからでもなく体を離すと、今度は目を合わせたままお互いに黙り込んだのだ。
彼が一体何を考えていたか迄は分からなかったが、私はその次の行動に躊躇いを感じてしまって、目を反らす様に俯いた。
私がその事に対して「あ、嫌とかじゃなくて、今はまだ…その…」と言うと、「何が?」と返されて、説明に困っていると悪戯っ気のある笑い方をして「ごめんごめん、冗談。分かってるから」と言った。
揶揄われた事に赤面して軽く睨むと、彼は微笑んで、鈴原の家に戻る事に対しても、子供の海斗の事もあるから絶対に行くなとは俺には言えない…と言って、更には、きつくなったら絶対に無理はしないで直ぐにこっちの家に戻り、病院にも来るって約束してくれるんだったら、俺はもう何も言わないよと言ってくれたのだ。
「俺の事を思い出したいって言ってくれたから…」とも。
その後、圭吾とまめに連絡を取り合う事の約束をすると、消して面倒臭がらずにと念を押されて、私が「それじゃまるで、私がよっぽど酷い怠け者みたいじゃない…私はこう見えてマメな方なんだけど…」と言ったら彼が私に見せたのは嘘をつくなと言いたそうな顔をした。
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