月夜の下に #2

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別に嘘をつく気は無いけど、これじゃ彼の前では嘘は付けないなと思いながら、「だいたい、そんなに年上をからかって面白がらないの!」と、冗談半分で叱ってお互いに笑い合うと、「じゃあね」と告げて、何とも言えない思いに駆られたままの状態で別れたのだった。 帰ってからのその日は、ずっと圭吾が無事に家に帰り着いたかどうかが心配で「無事に帰り着いた?」とメールを送ると、そのままいつの間にか眠っていた。 そしてその返事が、メールを送った時の約一時間後に来ていた事に気付いたのが翌朝の七時半。 薬の作用もあってか、目が覚め起きてみると、昨日の出来事がまるで夢だったかの様な現実味の薄い物に感じてしまって、その日一日は圭吾のメールを何度も見ては夢ではないんだと確認して過ごした。 だいたいそんな感じでぼんやりとしたままあっと言う間に一日が過ぎていった。 そして今日。 一昨日彼の話していた小説の事を思いだして私は書店に向かうと、それを購入し手に入れる事が出来た訳だ。 圭吾に少しでも近づく為に…。 私は、目の前の景色に目を細めてゆっくり息を吐くと、足早に歩き進めた。 自分の向かう可き方向に進む為にも。
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