鈴原家

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もし、会った時はどうしよう…。挨拶くらいはしてもおかしくないよね。知り合いだって事くらいは説明出来るし… だけど、そんな事を考えてたところで、圭吾くんも忙しいだろうし、会えるかどうかもわからないし… そんな風に考えながら、私は水族館に行った、数日前の事を思い出していた。 後部座席には、終始燥いで、疲れきった昌哉が眠っている。 静かなエンジンの音を、少し上回るくらいの控えめな音量で、圭吾の趣味なのだろう、私も好きな洋楽で、R&Bシンガーの女性と、男性のヒップホップシンガーのfeaturingsongが流れていた。 その曲の前にはジャズも入っていたりして、全体的に雰囲気のある落ち着いた感じの曲ばかりが、圭吾によってそこに編集されていた。 水族館を出て、既に1時間が経とうとしていた。外はもう日が沈みかけていて、東の空は随分薄暗くなってきている。 「さっき、水族館で、圭吾君が俺のせいかもしれないって思ってた…って言ってたけど…、どうゆうこと?」 水族館での話の続きを切り出したのは、また私の方だった。 「あ、うん。それね…」 圭吾は暫く黙り込むと、「実は…」と言って苦笑した。 「あの日、俺ん家出る前に…」 「………」 「……………」 「………ん?出る前に、どうしたの?」 何故か、続きの言葉がなかなか出てこない圭吾に、私は思わず問い質した。 赤信号でゆっくりと停車させた圭吾は、ハンドルを握ったまま前のめりの姿勢に変えると、軽く俯いて静かな声で「あー」と唸った。 昌哉と仕草が似通ってるのを感じて、やっぱり兄弟ねと思いながら、じりじりと圭吾の顔が覗けるところまで顔を傾けていく。 一体何を言い躊躇っているのか分からないが、恥じらった様子で苦笑いしたまま圭吾の表情は固まっていた。 そんな圭吾と覗き込んだ私の目が合うと、笑み崩れた圭吾。観念したのか顔を上げると、話し始めた。 「その、美咲さんに告ったんだよね。俺。」 圭吾はそう言って声を出して笑った。
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