鈴原家

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私は、私が圭吾に告白されてた事実にも驚きはしたものの、正直、告った事を話すのに、あんなにまで恥じらっていたのかと思ってしまって、つい、乙女か!と言いそうになって口に蓋をした。 「そ、そうだったんだ。それで、私は返事をしたの?…なんて言ってた?」 圭吾はその私の質問に、また、苦笑いを浮かべると、ブレーキのペダルから足を外し、アクセルを踏んで答えてくれた。 車は再び走り出した。 「それが、何も答えなかったよ。………と、言うのも、今思えば、あの時美咲さんは遁走を起こしてたんだろうなって事は分かるんだけど、あの時はそんな事分からなくて、きっと旦那のせいで、辛い思いをさせられてるんだろうと思ったら、なんかあのまま帰す訳にもいかなくなってきて、ほっとけなくて、しかも段々旦那にムカついてきたらさ、自分の気持ちを抑えきれなくて、それで……」 再び口を噤む圭吾。 「そっか、そうだったんだね。遁走ってたしか、えっと…、なんだっけ。」 「自我が表に出ないで、無意識の状態で行動をとったりするんだ。結果的に記憶障害がおきる。でも、まさか遁走だったなんて思ってもみなかったから、返事がなくイエスもノーも言わないし、喋らないから、その時は自分の都合のいいように解釈して、それで………」 「………」 「………………」 「………?え?…それで?」 圭吾が再び言葉を詰まらせ沈黙したので、私はまた、その続きを促す為に相槌を打った。 「あ、ごめん、なんでもない。なんでも……。」
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