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すると、圭吾が大きく溜息を吐き、前に屈んで片手で顔を覆った。
「そっか…そうだったんだ。やっぱりか。はぁ、ここに誘ったのは失敗だったね。ほんと、ごめん。」
そう言って、圭吾はもう一度溜息をつく。その姿が自分を責めているような気がして、私は「どうして?」と言った。
「失敗って、どうゆう事?私は楽しかったし、だからって何もおこってないよ?」
「…実は、知ってたんだ。美咲さんはここが初めてじゃないって事。前に聞いてたから。だけど、ここに来る前、車の中で初めてだって言った時に、ひょっとしたら…って思って、あまりいい予感はしなかったんだけど…」
圭吾は再び溜息を吐くと顔を上げてこちらに向き直った。
「俺は、今でも正直言って、今の症状が悪化する様な事はしたくないし、して欲しくないと思ってる。だから、本当はあの家に戻る事にだって…正直、今でも心から賛成は出来ていない。
だけど…、今の美咲さんには、あの家意外に、ちゃんと居場所があるから。」
「居場所?」
「そう、居場所。」
そう言うと、圭吾は私から目を逸らした。
「今居る、お母さんとお祖父さんの家もそうだけど…、そのさ…、美咲さんが、俺の所も居場所の一つだと思っててくれてるって、思っていても、問題…ないよね?」
「え…」
圭吾は再び此方に目を向ける。
居場所…その言葉をもう一度心の中で咀嚼してみる。私の居場所は彼、圭吾の所にある。そう改めて言葉にされると、胸の奥が勢いよく締め付けられた。
なんとなく、圭吾との関係も気持ちもこのままの状態で留めておいて、棚上げしておきたい気持ちがあった私にとって、その圭吾の言葉に即答ができなかった。
だけど、この前彼に告白した気持ちが、嘘じゃないのは事実。
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