0人が本棚に入れています
本棚に追加
「うん…。圭吾君がそう思っててもいいって、言うんだったら…、私も、そう思っていたい…かな。」
そう口にすると、一気に恥ずかしさが込み上げてきて、顔が火照りだしたのが分かった。
「勿論俺はそう思ってて貰いたいんだから、いいに決まってる。…それじゃ、そう思ってて。いつでも待ってるから。」
「あ、ありがとう。」
赤面してるだろう顔が、より赤くなってしまう程真っ直ぐに見つめてくる圭吾に、たじろいでしまってる私を他所にして圭吾は、真剣な顔をすると話の続きを始める。
「それで、その居場所が他にもある状態だったら、美咲さんが無理して記憶を取り戻そうとさえしなければ、あの家に戻ったとしても、大丈夫なんじゃないかって、そう思ったんだ。
忘れないで欲しいのは、今のこの状態は、美咲さんにとって、記憶を忘れさせて、無かった事にしておくのがベストだと、美咲さんの心と体が判断した結果だという事。それだけは頭に置いててもらいたいから…。」
私は頷いた。
「そこまでいろんな事を考えてくれてたんだね。なんて言ったらいいかわかんないけど、本当に、ありがとう。」
そう言うと圭吾はまた、前に屈むと、今度は口に手を当てた。
「別に、礼なんて言われる様な事じゃないんだ…。
頭では分かってても、やっぱりどこかで少しは思い出して欲しいと思ってしまうし、その反面、美咲さんとこうやっていれるんなら、思い出さずにこのままで…って思ってしまうし、矛盾してる…。
美咲さんの事を考えてる様に託けて、結局、自分…なんだ。最低だと思うよ。本当…。結局血は争えないって事なのかな…。まじうんざりするよ。結局何がしたいのか自分でもよくわからなくなるし。」
「え?」
私は、圭吾の最後の方の言葉が上手く聞きとれず、聞き返した。
「いや、ごめん、なんでもない。とにかく、矛盾してるかもしれないけど、美咲さんには、あの鈴原のうちに戻る前に、話しておきたい事があるんだ。いずれ、美咲さんも気付く事だと思うから、前もって知っておいた方が、ショックも大きくならないだろうし。」
上体を起こした圭吾が、真っ直ぐに私を見つめるとそう言って話し始めた。
最初のコメントを投稿しよう!