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「ごめんね。」
そう、謝らずにいられなかった。
事故当時の私自身が、一体どんな事を考え、思い、そんな行動に出たのかなんて、いくら考えても今の私には分からないが、自分の運転するバイクの後ろに乗っていたはずの人が、自ら手を離し後ろのシートから消えていれば、誰だって恐怖を抱く。
「どうして私はそんな事を…」
私がそう言うと、圭吾は「違う、ごめん。別に美咲さんを責めてるとか、そうゆうのじゃなくて。」と慌てて否定した。
「実は、俺のせいでもあるんじゃないかって思ってたんだ。今思えば、きっと…」
圭吾はそこまで口にして止めると、何かに気づいたようにして後ろを振り向き驚いた。
「昌哉、いつの間にそんな所で…どうした!?」
驚いて振り返ると、ベンチに座る私達の後ろにぼんやりと立ち尽くしていた昌哉がいた。
「なんだ?眠いのか?」
圭吾が、そう昌哉に聞くと、「うーん」と小さく唸るように返事をして、今にも閉じてしまいそうな瞼を必死で開けようとしているのか、眉が上下に動いて額に皺を寄せている。
遠のく意識とも戦っているのだろう。白目を剥き、時たまピクリと首を横に振る。
その姿に、ふっと和まされて笑みが出る。
「もしかして、遊び疲れて眠くなった?」
私が聞くと、「全然!大丈夫やし。」と、口をへの字に曲げて強がる昌哉。
「全然大丈夫そうには見えないけど。」
拍子抜けしたのか、圭吾も笑うと、昌哉の頭にそっと手を伸ばして「そろそろ帰るか?」と続けた。
その優しい眼差しを昌哉に向けて微笑む彼の姿に、彼のこういった、穏やかで優しい所が、好きだな…と、そうおもった。
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