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目が覚めたらそこには柔らかな乳房があった。
「何が起きた…?誰の乳房なんだ…?」
俺は思い切りうろたえたが、俺の思いとは逆に身体は喜びにはずみ、目の前の乳房にむしゃぶりついた。
女は嬌声を上げるか、身をよじるかと思った。俺は一体何をやっているんだ。
しかし、俺の予想を裏切って優しげな声が上から降って来た。
「よしよし…」
しかも女は俺の頭を優しく撫でている。なんなんだ、ここは。誰なんだこの女は。俺は思わず右手を伸ばして乳房をつかもうとした。そして気づいた。ぷっくりとした小さな手。桜色の小さな爪。
「良い子ね。あとで爪を切ってあげましょうね」
これはプレイじゃない。俺は目が覚めたら赤ん坊になっていた。冗談じゃない。俺は昨日までとある暴力団のNo.2。所謂若頭ってヤツだったはずだ。肩から彫った入墨があったのに、誰も気づかないのか?
「坊や、肩に痣があるのね。大きくなったら薄くなると思うけど、変わった形…」
痛みに耐えて彫った入墨も赤ん坊になった俺の肩で単なる痣になってしまったらしい。なんて事だ。それにしてもこの女、何処かで見たような気がする。どうも見てると緊張してくるがお袋じゃないのか?
「あんた、見てごらんよ。私のおっぱいを必死に吸ってると思ったら、今度は顔をしかめてじっと見てるよ」
あんたと呼ばれたヤツの方を振り向いて見た。
「オ、オヤジ!」
そう、そこには組長が、俺たちの組織のオヤジが立っていた。勘弁してくれ!元に戻してくれ!けど、この体勢のまま元に戻すのは絶対やめてくれ!殺される!
そのまま俺は気が遠くなった。遠くから会話が聞こえてくるが身体が動かない。
「あら、眠ったのかしら?」
「ああ、薬が効いた様だからな。ちょいとワケありでコイツには暫く眠ってて貰う。心の底で一番望んでいた事を夢に見ながら一時的に脈が止まる秘薬を酒に入れて飲ませたんだ。今頃どんな夢を見てることやら…。あとでゆっくり聞いてみてくれ」
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