5人が本棚に入れています
本棚に追加
「そりゃ、秘密にしていないと……祭りで持ってかれてしまうだろ? お母さんもそれを心配して、絶対に誰にも見せないでって釘を刺されてたんだよ」
恐る恐る箱から取り出す。もう二十年も箱に仕舞われていたのに、それは真っ白く輝いていた。
「ありがとう」
ぽつりと呟いたその言葉に、お父さんは深く頷いていた。
隠し続けてくれたお父さんに、これを残してくれたお母さんに。私はそっと目を閉じる、今では朧気にしか思い出せないけれど、お母さんが愛してくれていたという証拠が今私の腕の中にある。
目を開けると、海は遠くなっていた。女の子の大事な物と私があの日捨てた【嘘】を飲み込んだ海、私は一生好きにはなれない。
最初のコメントを投稿しよう!