少女の嘘と夏の祭り

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 そして今、この町には十四歳の女の子なんて私しかいない。だから必然的に、今年の祭で一番大切なものを捨てる巫女の役は私がやることになっていた。これは、生まれた時からもうほぼ決まっていることでもある。 「まだ全然。どれが一番大事かなんて、わからなくって」 「でも、お祭りもそろそろだよ?早く決めないと……」 「そうなんだけどねぇ」  私は言葉を濁した。 「なっちゃんだったら、『アレ』かなって思ってたんだけど……無くしちゃったんだよね?お母さんのハンカチ」  久しぶりにその言葉を聞いた私の肩が、びくりと震える。それを明美ちゃんに悟られないように、わざとらしく声音を低くして、しょんぼりと肩を落とした。 「そうそう。あれが一番大事だったのに、小学校の遠足の時にどこかに落としちゃって。みんなに探してもらったのに見つからなかったの」 「でも、お祭りも近いし……早く決まるといいね。じゃ、また明日学校でね」  Y字路の分かれ道で、手を振って別れる。明美ちゃんの家は個人病院をやっていて、登り坂のうんと上、山の中にある。うちは対照的に、下りに下って海のすぐ近くに家があった。  私は、嘘をついている。小学生の時からずっと。     
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