少女の嘘と夏の祭り

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少女の嘘と夏の祭り

 私は海が嫌いだ。波はザラザラと砂浜の上を這い回り、良いもの悪いもの全てを引き込んでいく。 私は、海が嫌いだ。  私たちが暮らす港町には、奇祭と称される一風変わった祭がある。  毎年夏至の日に、巫女の役に選ばれた十四歳の女の子が一番大切にしているものを海に捨てる。そんな一風変わった祭りだ。これは、この海がずっと豊かでありますようにと願いを込めて、もう何百年も前からずっと行われている。うんと昔は、齢十四の女の子を生贄として海に流していたらしいが……現代に近づくにつれて、それがあまりにも野蛮すぎるということで、今ではその写し身となる、十四歳の女の子の大切なものを海に捨てることになった。 「なっちゃん、何捨てるか決めた?」  学校帰り、一つ下の女の子、明美ちゃんがそう聞いてきた。  明美ちゃんの着ているセーラー服はまだピカピカで、あちこち擦り切れてシワシワになった私のそれとは違う。私は口を真一文字に結んで首を横に振った。  ここ数十年のうちに、この町は過疎化が進んだ。子どもの数も一気に減ってしまって、私たちが通っている中学校も、全学年合わせて十数人程度の生徒しかいない。     
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