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そんなことを物思いに更けながら溜め息が出てしまっていたらしい。
「...ハア。」
「...何か悩みでもあるのか?さっきから溜め息ばかりついているけど...。」
その声に我に返った。今は放課後、ここは図書室のカウンター。
「...何でもないよ!最近、お菓子の本を借りる人多いよね!」
上手く話をそらした。
「...ああ、そうかも。バレンタインだかなんだか知らないけど、ウザいんだよな。俺の好みを知った所でどうなるって言うんだ。俺は受け取る気はないし、甘いの嫌いなんだよ。」
神谷君は苛ついている様子だった。
「...そうなんだ。私はいつも友達にあげているんだけど、毎度考えるの大変なんだ。...ごめんなさい、変な話をして。」
かなり気まずい。
「...いや、別に良いよ。日生を見ているとあいつを思い出すな。雰囲気が似ているというか、おちょこちょいな所が...。この時期になるとあいつを思い出す。桜は明るくて、優しい奴だった。あの日も俺があいつを迎えに行っていれば、あんな事にはならなかったのに...。」
彼は辛そうで、何を言っても偽りになる気がした。
「...いや、悪い遅くなって!何、この険悪なムードは?」
この場に似つかわないようなハイテンションな人こそ、古文の先生で、図書館の管理を受け持つ川内京介先生なのです。ルックスが良く、賑やかで面白い先生で、男女と共に人気の高い先生なのです。
「...先生、気のせいですよ!私達、いつも黙々と静かな図書当番をしていますし...。」
「そうか?じゃあ、本を運ぼう。」
川内先生と一緒に運び、整理したらあっという間に日が暮れて6時を過ぎていた。
「...先生、終わりですね。んー、やっと帰れる。じゃあ、お疲れ様でした。」
背伸びをして、帰れる準備をしていた。
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