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それから、最寄りの駅まで送ってもらい、神谷君と二人になった。
「...今日は大変だったね。川内先生、本当に勝手だから...。」
何か話さないと、不安になる。
「...ああ。雪、降りそうだな。寒くないか?」
ちょっと震えているのが分かったらしい。
「...大丈夫だよ。ほら、コート着ているし...。クシュン...。」
彼は自分が巻いていたマフラーを外して私の首に掛けた。
「...大丈夫じゃないだろう。俺より家が遠いんだから、マフラーしてけよ。風邪拗らせると大変だからな。」
「...ええ、でも神谷君に悪いよ!」
「...気にするな。女が体を冷やすのは良くない。風邪を引くかもしれないから温かくしていけよ。」
「...ありがとうございます。じゃあ、お借りします。」
“マフラーを貸してくれるなんて思わなかったから嬉しい過ぎて夢じゃないかと思う。”
「...じゃあ、俺ここで降りるから気を付けて帰れよ!」
気が付くともう神谷君が降りる駅だった。
「うん。今日はありがとう。また、明日!」
ここで分かれた。さり気ない優しさが更に想いを募らせて行った。
家に着いて、マフラーのお礼をしようと考え悩んでいると、思い出した。いつもパンしか食べていないから、お弁当のおかずになるものを作ろうと、そうと決まれば、仕込みをし、簡素な食事とお風呂に入り、寝ることにした。
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