悪魔の言葉

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  「ユカリ、久しぶり。ごめんね、忙しかったでしょ?」 「ううん。私こそごめんね、チャットなかなか返せなくて」  ひとしきり挨拶を済ませると、私たちは近くのカフェに入った。  ユカリがよく行く店だそうだ。店内の装飾は落ち着いたライトグレーで統一されており、いかにもモダンといった印象だった。  ただひと休みするだけだというのに、私はどこか気取ったようなその雰囲気が落ち着かなかった。どこを向いても美男美女がノートパソコンと睨めっこをしているので、何かドレスコードでもあるのかと勘違いをしそうになった。  メニューを見ると、どの飲み物も私が住む街の相場より二倍ほど高く、笑ってしまいそうになる。  私はユカリと同じコーヒーを頼むと、空いていた席に着いた。 「……それにしても、サキがいきなりお嫁さんになって、さらにお母さんになるなんてね。びっくりだね」  そう言うと、ユカリはいかにもうれしそうな表情を浮かべた。 「ね。サキって高校の頃から結婚願望強かったから、本当よかったよね。……連絡が来た日、私ちょっと徹夜で仕事しててさ。すぐ返信できなくて、気分悪くさせちゃったかなあ」  ユカリはカップに赤い口紅が移らないよう、気を使いながらコーヒーを啜る。  その唇が、ピクピクと動いた気がした。 〝噂に聞いてたあの低学歴の彼と授かり婚ねえ。いかにもサキらしい。その間に私は広告代理店でエリートコースだわ〟  その言葉に、私はこう返す。 「……ユカリはさ、いつも〝仕事できる人ほどメールを早く返す〟なんて言ってたよね。なのに今回長いこと既読無視してたのは、やっぱり先にサキが結婚したことが悔しかったんでしょ?」  
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