悪魔の言葉

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   サキから送られてきた旦那の名前。それを検索すると、簡単に彼のSNSを割り出せた。個人情報など気にしないのか、彼の顔と本名がしっかりと投稿されているのだから分かりやすい。  そして、ユカリの勤務する会社のお問い合わせ用メールフォーム。女子校時代のいくつかのチャットグループ。それらを準備し終え、私はため息をつく。  ……サキとユカリはクラスの代表格のような存在だったから、私は彼女たちと話せることがうれしかった。  私は自分に、自信がなかった。だからすごい人と仲よくなれば自分もすごい人になれると思ったのかもしれない。二人の仲間になれることが、二人に認められることが、ただただうれしかった。  だけれど私は、高校を卒業した後に気付いた。  社会人になり、身だしなみとして化粧を覚えるようになって、私はようやく気付いた。  人には裏と表の顔があるということを。  私は今開いたSNSやメールフォームに、ある動画のURLを送信した。  それらは、隠れて私をいじめていたサキとユカリの証拠データだ。  私を蹴ったり小突いたりする二人の姿。彼女たちはいつも人がいない屋上でそういった行為を行いがちだったので、スマートフォンをセットし記録するのは容易かった。  私はあの頃、幸せだと思っていた。  でも、心の奥底では気付いていたのだろう。自分は彼女たちの親友ではなかったということに。  私は二人にとって、見下して自分を安心させるためのターゲットでしかなかったことに。だから私は、こんなデータを残しておいたのだ。だから私は、二人が一番幸せなこのタイミングを見計らっていたのだ。  パンドラの箱には、私を虐げるサキとユカリの記憶が詰め込まれていた。 『何これ?』 『ひど……』 『最低』  ……別に、私や貴方たちも似たようなものだけれどね。  そう思いながら、少しばかり反応を見たところで私はスマートフォンをポケットにしまった。  
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