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「それで、チャットで話した通りなんだけどね。ユカリに既読無視されたの……。親友だと思ってたのに、私ショックで」
彼女はほろほろと泣き腫らしていたが、薄く引かれたアイラインと艶やかなチークの化粧ノリは完璧だった。
彼女は学生時代から化粧がうまかった。
それはもう、女の私も惚れ惚れするくらいだ。彼女はかわいい。〝恋愛とか興味ないし、そもそも女子校だしすっぴんでいいよね〟などと思っていた私とは大違いである。
私は知っている。彼女は如何なる時でも、自分をかわいく見せることに余念がないことを。
そして、知っている。彼女の化粧の裏には悪魔が住んでいることを。
悪魔はこう言うのだ。
〝既読無視なんて、ユカリって本当最低。プライドを傷付けたユカリを私は絶対に許さない。ねえ、そう思うでしょ? あんたは私の味方よね〟
その言葉に、私はこう返す。
「……ねえ、サキ。たとえユカリに対してそう思ったとしても、わざわざ高校時代のチャットグループで〝既読無視された〟なんて言いふらす必要なかったんじゃない? あのグループにユカリはいないけど、ユカリのことを知ってる人がたくさん見てるんだから。そんなにユカリの印象を悪くしたかった?」
……なんちゃって。
もちろんそんな風に言われていないし、言うこともない。
私はその妄想をそっと脇に置き、外向きの言葉を羅列する。
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