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魔妃様は他の魔物と交わりたくなかったはずです。その魔妃様に気持ちを打ち明けられたのなら、尊重しなければいけません。
しかし、その気持ちが揺れ動く出来事がありました。
ある日私は人間界を侵略するために魔王様に命令され、姿を隠して視察しました。
するとそこには溢れんばかりの子供たちの笑顔がありました。
そしてこう思いました。
『魔王様はこんな美しい世界を滅ぼそうとするのか?』と。
魔王様に力で叶う者は私も含めて誰もいません。
しかし、もし魔妃様に打ち明けられた秘密を魔王様に言えば、魔王様は絶対に動揺されて、作戦に支障が出ます。
動揺されて思うように力が出ない魔王様なら、人間に確実に倒されます。
しかし、それは魔妃様を裏切る行為ですし魔物界を滅ぼす行為にも等しい。
しかし言わないと、この美しい世界は滅ぽされてしまう。
その葛藤を私は心の中で繰り返しました。
私は視察の報告を魔王様にする際、魔王様が作戦の準備で魔妃様の様子が見られない代わりに、魔妃様についても決心が付かないままこう告げました。
「魔王様との間にできた子どもは、
お腹の中でお父さんの活躍を大変喜んでおられるとの事です。」
それを聞いて魔王様はとても喜んでくれました。
そして誰にも知らされないまま、魔王様の子どもとして赤ちゃんが産まれました。
その後魔王様は以前にも増して破竹の勢いで、人間界を次々と滅ぼし始めています。
おお!神父さま、申し訳ありません!
ここも明日滅ばされる手はずとなりました。
しかし神父さま、一つだけ気づいた事があります。それはこの人間界を滅ぼして魔物界に変えても、魔妃様の周りのように笑顔で溢れると言う事です。
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