サカナは出会い、青春を駆ける

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 とにかく僕が言いたいのは、外見というのはその人の生き方を否が応にも左右してしまうわけで、それは自分にはどうしようもないということだ。生まれたときにそれは決まってしまっていて、そして生まれてからはもうどうすることもできない。そしてこの平和と幸福で満たされた先進国たる日本では、そうした偏見や差別というのは嫌らしく蔓延っていた。  別に誰かのせいにするつもりもないし、特定の誰かを恨むわけでもない。強いて言うなら悪いのは僕だ。こういう運命を定められてしまった僕こそがすべての元凶と言えよう。 僕は生まれたときから顔がサカナだった。  上手く思い浮かべられてもらえるだろうか。首までは人間そのものなのに、首から上には本来あるべき人間の顔の変わりに、アジだかサンマだか、はたまたマグロなのかどうかはわからないけれど、まさしくサカナが乗っているのである。  自分でも構造はよくわからない。ある程度の理解力を得て物事の判断がつけられるようになった頃に、自分の身体(というか顔)については担当医から詳しく説明を受けた。『奇面病』というらしく、こうして首から上が何か違う動物になってしまうというのは、割とよくあることなのだと言う。千人に一人だったか一万人に一人だったか、具体的な数値は忘れたけれど、世の中にはそうした人々が一定数存在する。     
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