サカナは出会い、青春を駆ける

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 僕はそうした行為をただ黙って受け入れるしかなかった。たとえ機能や遺伝子で見れば微かな違いだったとしても、僕は明らかに彼らとは違うのだから。 悪意は一方向的で、どこかに向けられている間は他の場所に向けられることはない。無差別な悪意だって無差別という一方向に向けられているだけで、そういう意味では極めて差別的だ。だからできるだけ、人は自分以外のところに他人の悪意を向けようとする。突然自分の方に悪意が向かってこないようにするためだ。  特に学校という閉鎖されたコミュニティではそれが無意識に、ごく自然なこととして行なわれる。最もわかりやすい例が俗にイジメと言われるものだろう。そしてその悪意の対象はわかりやすいところに集中する。それが一番安全で、管理がしやすいからだ。そうした流れで行けば、僕のような人材は極めて貴重と言えよう。  こんなにも長々と自分語りをしてしまったけれど、結局僕は今まさにイジメられているというだけの話だ。もう高校も半分を過ぎたというのに、未だに日々殴られ、蹴られ、罵倒され、無視され、理不尽に使われ、どうしようもなく生きている。今日もまたいつのまにか僕がすべて悪いことになっていて、教師に小言を言われる。 『お前は死んだサカナみたいな目をしているな』     
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