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「けっ、なんだよ」
その迫力に分が悪いことを悟ったのか、僕に暴行を加えていた西崎くんを始めとした四人は、ぶつくさと捨て台詞らしき言葉を吐きながら、一目散に逃げていった。
僕は内臓が押し出されるような鈍痛を堪えながら、真上にあるそのオオカミの顔を見上げる。その顔は当然ながら人間とは似ても似つかず、明らかに異質だった。しかし、不思議と見ていて違和感がない。彼にはその恐ろしくて面妖な顔が似合っていて、たぶん彼はきちんと自分の奇妙なアイデンティティと向き合っているのだと思った。
そんな僕の熱い視線には目もくれず、彼は軽く溜め息を吐くと、そのまま足早に去っていく。せめて一言、お礼だけでもと身体を起こすが、ちょっと動いただけで下腹部に激痛が走り、とても彼を追いかけることはできなかった。
小さくなる後ろ姿をいつまでも見つめながら、僕は「もし自分がオオカミだったなら」と考えずにはいられなかった。
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