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――これが僕とオオカミくんの出会いだった。
もしも運命の出会いというものがあるなら、きっとこういうことを言うのだろう。僕に一瞥もくれずに去っていく彼の背中は、そんなことを思わせるほどに僕を魅了した。
彼としては助けたつもりはないだろうが、僕は彼に救われた。あのとき彼が現れてくれなかったら、今頃病院のベッドの上だったかもしれない。あの後も、僕を蹴っていた西崎くんたちはばつが悪いのか、あまり近づいてこなくなった。
そして、何より僕は彼に一目惚れしてしまった。寝ても覚めても彼の顔が頭から離れなかった。いや、勘違いをしないでほしい。僕は決して男色気があるわけではない。
彼は僕と同じ『奇面病』でありながら、凛とした姿をしていた。他と違う自分の容姿に悲観する様子はなく、とても真っ直ぐな目をしているように見えた。力強いその立ち姿がかっこよくて、僕は彼に憧れを覚えた。
たぶん僕がオオカミになったとしても、あんな風にはなれないだろう。逆に彼がサカナになったなら、きっとそれでもかっこよく見えると思う。
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